ホーム > 山田錦研究会 > 第86号 圃場巡回で出穂は9月上旬と予想。今後は継続的な水管理が求められる。
圃場を巡回する会員
8月上旬の稲の姿
葉色を測定する
レクチャーする乗松相談役
幼穂を観察する鈴木会長(右)
幼穂の長さを測る
静岡山田錦研究会の定例活動である今年2回目の圃場巡回が8月2日に行われました。8月に行われるこの巡回は7月に行われた第1回目の巡回と同様、地区ごとの代表圃場(田んぼ)を回り、稲の発育状態を調査するものです。前回の巡回が7月10日でしたので、今までになく間隔は短いものですが、この間、気温の高い日が続いていたので山田錦の生育状態が気になるところです。
この日は、晴れたり曇ったりの天気でしたが、相変わらずの暑い日となりました。毎年8月の巡回終了後には研究会の懇親会が開かれるため、7月に比べ30分早いスケジュールとなりましたが、研究会の鈴木良紀会長をはじめ会員、JA職員、そして、花の舞から事務局の斎藤主任、青木副杜氏、蔵人の鈴木さんらが参加して朝8時30分に湖西市をスタート、浜松市、磐田市、森町、袋井市にある会員の圃場を巡回しました。
その他の会員は7月と同様に自分の地区の圃場で本隊を待ち受け合流しました。筆者はおなじみの合流ポイントである都田地区の鈴木会長の圃場へ行ったのですが、だれもいません。これは、置いていかれたかな、と不安になっていると、浜松地区の会員数名とJAの職員が車でやってきたので安堵しました。そして、挨拶を交わしていると、ほどなく本隊が車を連ねてやってきました。
車が到着すると、すぐに計測係2名が圃場に入ります。同じポイントで計測するために、前回の巡回の時に目印の青い棒が立てられています。
この時期の巡回の目的は出穂(穂が出る)時期の予想と穂肥(穂のための肥料)をいつ、どのくらい入れるのかの判断をするためです。測定したのは1株茎数、草丈、葉色、CM値、幼穂長等です。どんな数値になっていたのか、稲の様子はどうだったのか、午前中の巡回が終了したところで鈴木会長に話しを聞きました。
まず、気になっていたのが7月の巡回では全体的に葉色が濃かったことです。今回ではどうなっていたのでしょう。「だいぶ色が抜けてきています。草丈(稲の長さ)も80cm台で例年通りですから大丈夫です」。この鈴木会長の言葉を聞いて一安心。
分けつ(田植え時の苗が何本に増えているか)は20本から22本くらいということで、やや少なめなのですが、これについては、「これがそのまま穂になってくれればいけるでしょう」と言い、「中干し(田んぼの水を抜いて干し、分けつを止めること)も、みなさんゆっくりやってくれたようで問題はないと思います。会員それぞれが考えながらやってくれています」ということなので、こちらも大丈夫そうです。
8月の巡回で重要なのは幼穂(ようすい)のチェックです。幼穂とはその名の通り、やがてりっぱな穂になる若い穂のこと。今はまだ地面から10?15cmほどの茎の中にあり、外側からは見ることができません。そこで、茎を縦に裂いてその断面で幼穂の長さを計ります。
今年の幼穂はどうなのか聞くと、「小さいですね。1ミリ未満が多いです」と言います。しかし、「この2、3日でかなり伸びるのではないでしょうか。心配はいらないと思います」。と言うことは、穂が出るのも少し遅くなるのでしょうか。「9月上旬頃でしょう。例年より遅くなると思います。コシヒカリのような早生(わせ)系は早く、山田錦などの晩生(おく)は遅いような気がします」と鈴木会長は予想します。
それでは、穂のための肥料である穂肥を入れる必要のある圃場はあったのでしょうか。「一発肥料(1回で通年効果がある肥料)でやっている人は入れる必要はありませんが、それ以外では数人いました。葉の色が抜けてから、8月中旬に肥料を入れるように指示しました」ということなのです。
話しを聞き、山田錦はおおむね順調に生育していることが分かりました。最後に、これから気をつけることを聞くと、「とにかく、根の生育を維持するために、間断灌水(水を入れたり出したり)をすることです。稲刈りをするまでやるべきです」と言い、水管理の重要性を強調しました。
それから、病害虫については、カメムシの注意報が出ていると言い、「湖北地区では現在例年の7倍のカメムシが出ています。早生のコシヒカリの防除をしっかりやらなくてはいけません。それらが卵を産んで増えれば晩生(おく)の山田錦に及ぼす影響が大きいですから」、ということで、鈴木会長もこの巡回の後、防除をする予定だと語りました
昼食会場には午後の巡回に参加する会員がやってきました。鈴木会長が午前中の巡回を総括する話しをして食事となり、そして、食後には乗松相談役から話しがありました。乗松相談役は資料を用意して、高温・低温障害についてのレクチャーを行い、会員は熱心に聞き入っていました。
昼食後の最初の巡回圃場はその乗松さんの圃場でした。今は圃場の色がまだらになっています。これについては、「1週間から10日経てば、そうとう色は抜けてくるでしょう」と乗松さんは言います。
そして、会員に対して、「これからは1週間同じ状態にしておいてはだめ」と、注意を促します。その理由は、「水を入れて1週間そのままだと、水の酸欠になる。水を切って(抜いて)1週間置くと乾きすぎて空気中の酸素を吸う根っこができてしまう。そこに水を入れたら窒息してしまう」ということで、稲の根を生かすために、水管理を徹底するよう説きました。水管理については鈴木会長も指摘していましたが、やはり、この時期、最も重要なことなのです。
今年も巡回が終わった後に研究会恒例の親睦会が浜名湖畔のホテルで開催されました。蒸し暑い天候のもとでかいた汗を温泉で洗い流し、そして、その後は自分たちが栽培した山田錦でつくった花の舞のお酒で乾杯。さぞその味は美味だったことでしょう。