ホーム > 山田錦研究会 > 第85号 猛暑の中、第1回目の圃場巡回を実施。 分けつ順調。今後は水管理が重要。
圃場を巡回する会員
この時期の稲の姿
挨拶する土田杜氏
葉色を測定する
稲を観察する(中央が鈴木会長)
データをチェックする乗松相談役(中央)
静岡山田錦研究会の定例活動である今年1回目の圃場巡回が7月10日に行われました。この圃場巡回は会員の圃場(田んぼ)を回り、稲の生育状態を視察するもので、会員の圃場が遠州地方(静岡県西部地区)に広く分布しているため、例年各地区の代表圃場を巡回しています。
田植えをしてから約1カ月が経過し、一昨年より9日、去年より4日遅い第1回目の巡回となりましたが、稲の生育はどうなっているのでしょうか。
遠州地方(静岡県西部地区)は7月8日に梅雨が明けました。今年は早々と5月下旬に梅雨入りし、いつ梅雨が明けるのか気になるところでしたが、意外にも早い梅雨明けとなりました。そのために、この日は朝から猛暑となり、参加者は帽子、タオル、水などをしっかり用意しての巡回となりました。
巡回は朝、湖西地区から東に向けて始まりました。本隊は研究会の鈴木良紀会長、会員をはじめ、花の舞酒造から事務局の斎藤主任、土田杜氏、青木副杜氏、蔵人の鈴木さん、そして、JA職員のみなさんで、代表圃場すべてを巡回します。他の会員は部分的、あるいは自分の地区のみ参加するかたちをとり、本隊を待ち受けて、途中から合流しました。
その合流地点の一つ、浜松市都田地区にある鈴木会長の山田錦の圃場では午前10時過ぎから、炎天下約10名の会員やJA職員が本隊を待ちうけていました。10時半頃、湖西方面の巡回を終えた本隊が車列を組んで到着。「ごくろうさま。暑いね」とあいさつをかわし、さっそく計測が行われました。
7月の巡回で行うのは1株の茎の数の確認。田植え時の苗が何本に分けつして(増えて)いるかを数えます。そして、草丈と稲の葉の色の測定をします。その前提となる情報として、田植え日、植えつけ深さ、1株植え本数をまず確認しておきます。そして、巡回、計測して分けつの状況はいいのか悪いのか、田んぼの水を抜く中干しはいつから始めるのか等の判断を下すのです。
午前中の巡回が終わった時点で鈴木会長に稲の様子について話しを聞きました。その第一声は、「葉の色が例年に比べると濃いですね」。その理由を聞くと、「天気が良すぎたので肥料を先に吸っているからです」と言います。詳しく解説してもらったところによると、田植え時にいわゆる一発肥料をやった会員が多いのですが、その肥料は温度が一定の高さに達すると数日後に溶け始めるようになっているのだそうで、6月は気温が高い日が多かったため、早めに動き、肥料が溶け始めているために稲の葉の色が濃いということなのです。
続けて鈴木会長は、「そのために、秋落ちの恐れもあります」と言います。秋落ちとは、稲が早めに肥料を吸いすぎて、秋に使う分の肥料が無くなってしまい、栄養失調になることです。その対応策としては「今から中干し(田んぼの水を抜いて干し、分けつを止めること)をしても色はあまり抜けないかもしれませんが、中干しを少し強めに(長めに)やって根を切り、落ち着かせること」と言います。ちなみに、その根ですが、「ちょっと多めに切ってやると、肥料になって、吸い上げるのですよ」ということなのです。
さて、その分けつ(田植え時の苗が何本に増えているか)については、「だいたい20本くらいまでいっている。良好ですね」と言います。そのため、「あと、1週間。25本までいったら中干しです」ということで、ほとんどの会員が7月中旬から下旬にかけて中干しを行うことになりました。
この日が猛暑だったため、これからも猛暑が続くことが予想されるのですが、その対策はどうしたらいいのか聞くと、「水管理をこまめにやることが大切です。今、田の水温は高くなっていますから、水を抜いて、また、水を入れる。これを何度も繰り返しやることです。その間に中干しをやる。それが一番いいと思います」。
8月2日には第2回目の巡回が行われる予定になっています。鈴木会長は「次の巡回で肥料を入れるか、入れないかの判断をしますが、葉色がストンと落ちているかどうか。次がポイントです」と言います。
昼食会場には午後の巡回に参加する会員もやってきて人数がまた少し増えました。食事の前に、鈴木会長が午前中の巡回を総括して話しをしました。そして、花の舞酒造の土田杜氏も挨拶をし、「梅雨明けが早く、高温が続いていますが、みなさんはプロだから肥料や水管理などきちんと対応されると思います。秋には私たち、そして、みんなが喜ぶ米にしていただきたい」と会員のみなさんを激励しました。
午後の部最初の巡回は研究会相談役の乗松精二さんの圃場です。筆者は例によって本隊より少し早く昼食会場を出発して乗松さんの圃場に着くと、ちょうど乗松さんも軽トラックでやってきました。
さっそくこれからの話しを聞くと、「今、水をたっぷり入れてから落とします。3、4日後から中干しをして7月下旬まで干します」と言います。その後については、「8月上旬には幼穂がなっているはずですが、その時、葉の枯れ具合が問題なければそのまま乗り切れる。怖いのは穂が出揃ったときの風(かぜ)台風と日照不足。雨台風だったら問題ないです」。猛暑については、「田植え後の気象が安定して日照時間も多いから、稲も健康に育っていると思うので、この程度の猛暑なら水の駆け引きで乗り切れるでしょう」と語りました。そうこうしている内に本隊がやって来て、圃場はにぎやかになり、乗松さんとの会話も弾みました。
この後一行は雲ひとつない炎天下、森町、袋井、磐田地区を夕方まで精力的に巡回しました。