ホーム > 山田錦研究会 > 第82号 データを揃え、勉強会を開催。さらに高い目標をめざす。
講演する土田杜氏
勉強会(講師は乗松相談役)
アドバイスする鈴木会長(右端)
乗松相談役に聞く青木副杜氏(左)と斎藤主任
グループ勉強会
冷たい小雨が降る天候となった平成25年2月6日、静岡県磐田市のJA遠州中央広瀬支店において静岡山田錦研究会の今年最初の活動である「勉強会」が開かれました。この「勉強会」は平成16年から毎年この時期に行われているもので、今回で10回目。ほとんどの会員とJA遠州中央、JAとぴあ浜松の職員、そして、花の舞酒造から土田杜氏と青木副杜氏、事務局の斎藤主任が出席しました。
朝9時、会場入り口には資料がずらりと用意されており、各自がそれぞれ1部ずつ取って席に着きます。その資料とは、「平成24年・23年・22年・21年山田錦栽培期の天気概況」、「稲作に利用したい年別・月別の気温の推移(平成19・20・21・22・23・24年分)」、「24年・23年産山田錦選別前全粒および稈基重関連値調査表」、「平成24年・23年山田錦稲体の形態調査表(全員分)」、「平成25年度山田錦栽培標準モデル・目標とする稲の姿」、「平成24年産山田錦玄米硬度測定値表(全員分)」。これらは去年及びそれ以前に会員によって行われた、成分検査、稲体の形態調査等の数値を事務局や相談役の乗松精二さんがまとめた労作で、この勉強会のテキストにもなるものです。
勉強会は事務局の斎藤主任の司会進行で始まり、鈴木良紀会長の挨拶の後、花の舞酒造の土田杜氏が登壇し、花の舞が現在取り組んでいることや研究会との関係について考えを述べました。土田杜氏は営業で東京地区のお客さんと話をした際のエピソードも披露、「研究会の山田錦のデータをお客さんに見せると説得力が増します。花の舞の酒づくりに関し、米からそのプロセスを説明できるのはうちだけ。自慢です」と語りました。そして、「今年も良質な山田錦をつくってください」と激励しました。
この後、斎藤主任が現在行われている大吟醸づくりの途中経過について語り、「極めて順調です」と報告しました。
続いて鈴木良紀会長が登壇し、今後の静岡山田錦研究会の活動について語りました。その中で、現行の価格設定では圃場評価と成分検査の数値が優秀な人には加算金が付いていますが、会員の技術が向上し、米の品質も安定しているので、今後はその方法を見直したい、と語りました。できれば今年から実施したいとしています。
この後は乗松相談役が登壇し本格的な勉強会となりました。乗松相談役はまず、資料である、平成24年の山田錦栽培期の天気概況を示しながら、去年の天候と米づくりとの関連について解説。会員には資料として用意された過去5年間の気温の記録を見て、今年に活かしてほしいと要請しました。その後は、平成24年山田錦稲体の形態調査表を見ながら、具体例をいくつか挙げ、解説をしました。最後は「この会の山田錦はどこに出しても恥ずかしくない。これからは兵庫県が追いつけないほどの米にしたい」と、目標を語りました
この後、質問を受け付けましたが、会員からは次々と質問が出され、まさしく勉強会らしい雰囲気となったのでした。
この後は、地区ごとに分かれ、副会長がリーダーとなってグループ別勉強会を行いました。この間、花の舞の青木副杜氏と斎藤主任が米に関する質問を乗松相談役にしてレクチャーを受けており、勉強はあちこちで行われていました。
鈴木会長は熱心に勉強会が行われたことについて、「みなさん真剣に取り組んでいます。内容は以前から言っていることですが、再確認する意味でも勉強会は欠かせません」と語ります。
また、今後の目標について聞くと、「米を取り巻く制度が変わっても、天候がどうあっても、それらに影響されないような栽培をしよう、米をつくろう、ということです」と言います。静岡山田錦研究会の目標はどんどん高くなっていきます。
勉強会が行われる前、平成24年12月に「稲体の形態調査」が研究会の乗松精二相談役が営む磐田市のサンシャイン農場事務所で行われました。この「稲体の形態調査」、去年は1月に行われましたが、今回は例年通り12月に実施されました。
この形態調査は毎年行われているもので、毎年9月下旬、花の舞の土田杜氏、青木副杜氏、斎藤主任らによって刈り取り前のすべての圃場(田んぼ)の評価が行われますが、その時に会員から1株ずつ稲を提供してもらいます。それを、乗松相談役の作業小屋に保管しておき、冬に調査するものです。当日は鈴木良紀会長、乗松相談役ら会員5人と事務局の花の舞斎藤主任、JA職員2人が集まりました。
調査はまず1株の茎を数え、稲の全長、稈長(茎の長さ)、穂長、止葉長、そして、節と節の距離(長さ)を測ります。それから、枝梗(しこう・穂の先のもみを付けた細い枝)の数、もみの全数、その内の実になっていない数(不稔・ふねん)をそれぞれ数えます。
その後は、稈基重(かんきじゅう)の測定を行いました。稲一株のいちばん下の地ぎわを切り落とし、そこから上10cm分を切り取ります。そして、1本1本の皮をむき芯だけ残し、その重さを計り、10本当たりの重量に換算した数値を出します。
この日の調査で得られた数値は「山田錦稲体の形態調査表」「山田錦選別前全粒および稈基重関連値調査表」としてまとめられ、このレポートでお伝えした「勉強会」で会員に配布されました。