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活動レポート

静岡山田錦研究会レポート

2日かけて、すべての圃場評価を行う。稲は遅れ取り戻して、順調に成長。

刈り取り前の稲穂

巡回する会員(その1)

評価する青木副杜氏(右)と斎藤主任

圃場に入る鈴木会長

葉色を測定する

巡回する会員(その2)

稲をチェックする青木副杜氏、斎藤主任

静岡山田錦研究会の今年最後の巡回活動である圃場評価が9月24日、25日の2日間にわたり行われました。これは、会員の刈り取り前のすべての圃場(田んぼ)を花の舞が視察し、A・B・Cの3ランクで評価をするものです。研究会が評価をするのではなく、花の舞の酒づくりの責任者が圃場を評価することについては、「生産者として杜氏がほんとうに酒をつくりたいと思うような山田錦をつくらなくてはいけない」との研究会の考えから、平成13年より毎年この時期に実施されており、今年で12回目となります。

9月に入っても毎日暑い日が続いていた遠州地方(静岡県西部地区)ですが、巡回の前日は雨が降り、気温が一気に下がって秋らしさが感じられたものの、巡回当日はまた暑さがぶり返しました。

青木副杜氏と斎藤主任で圃場を評価

圃場評価は当初から花の舞の土田杜氏が一人で務めてきましたが、一昨年は蔵の青木副杜氏、事務局の斎藤主任の二人で行い、去年は土田杜氏と青木副杜氏が行いました。去年、土田杜氏は、「今後は若手に引き継いでいこうと思います」と語っていましたが、その言葉通り、今年は青木副杜氏と事務局の斎藤主任の二人で行うこととなりました。

今年も去年と同様、1日目にJAとぴあ浜松管内の湖西・浜松・浜北地区、2日目にJA遠州中央管内の磐田・森・袋井地区を巡回しました。第1日目の巡回は朝、湖西地区から始まりましたが、この圃場評価は7月、8月に行う代表圃場の巡回と違い、すべての圃場を巡回するため、青木副杜氏、斎藤主任と研究会の鈴木良紀会長らの評価隊以外の会員は地区ごとに集まり、そこで評価隊を待ち受け、到着するといっしょに巡回するというシステムがとられました。

それでも、車を数台連ねての行動のため、信号で止まり、前の車がどちらに行ったのか見失わないように進むのは、なかなか神経を使います。以前、本隊とはぐれてしまった経験を持つ筆者は、今回も一人で運転したので、なによりもそこに留意して必死でついて行ったのでした。

代表圃場では稲の成長調査も行う

研究会では以前から19箇所の代表圃場を決め、毎年7月、8月の巡回、そして、この9月の圃場評価の際にも稲の成長を調査しています。今回もその代表圃場で、刈り取りのタイミングをはかるために必要な止葉(とめは)と呼ばれる茎の一番上の葉の色の測定、そして、活葉枚数(緑の生きている葉の数)の確認が行われました。

また、例年この巡回では会員すべてから稲を一株ずつ提供してもらっています。これはその後、一株ずつ、稈長(茎の長さ)、穂長、全長、枝梗数(米を付けた細い枝)、一穂粒数、止葉長、千粒重などなど、稲のすべてを計測、計量、分析し、会員全員分の「稲体の形態調査表」をつくるためのものです。

順調に生育し、遅れを取り戻す

すべての圃場を巡回する鈴木会長に途中で話しを聞きました。8月の巡回では全体に草丈が短く、発育は遅れ気味だったのですが、今回はどうだったのでしょう。「思ったより進んでいました。8月の巡回以降、順調に成長しましたね」と言います。

また、8月上旬の時点では幼穂(ようすい)も例年に比べ小さく、穂が出るのは9月には行ってからではないかとの予想でしたが、「8月下旬には出穂していたものもありました。ほぼいつもの年くらいだったのではないでしょうか」と述べました。また、8月の巡回時点では水管理が大切ということでしたが、それについてもみなさん対応していたようです。

葉色については、「少し色が濃い稲もありましたが、活葉枚数が通常より少し多く残っているので、肥料が残っていてもまだ動きます。少し、刈り取りを遅らせれば大丈夫でしょう」と語るのでした。

粒数多く、収量が期待できそう

今年の稲の特徴を聞いてみると、「全体に粒数が多いようです。20粒ほど多いかな。これからの管理や刈り取りが適期に行われたかによりますが、胴割れ等がなければ収量は上がる可能性はあります」とのこと。さて、その刈り取りですが、10月の5日から10日の間に行われる圃場が多そうです。

毎年、すべての圃場を見ている鈴木会長ですが、以前と比べて変化はあるのでしょうか。「以前、稲の色は圃場によって濃い、薄いがあったのですが、今はみんな似かよってきています。だから、お米自体も似かよった状態になるのではないでしょうか」と言います。つまり、高品質で均一化した山田錦が採れるというわけです。

この一年を振り返って、感想を聞いてみると、「毎年、天候が異なります。今年も暑い、寒いがありました。会員はそれに対応して水の管理をしたり、肥料の量を抑えたり、いろいろ考えながらやっています。今年もその成果が出ていて、みんな高品質な米をつくっている。技術が上がっています」と語りました。

いいものはいい、花の舞評価者の感想

1日目の圃場評価について青木副杜氏は、「スタートの湖西地区から評価の基準をどこに置いたらいいのか考えましたが、"いいもの"というのが分かったので、それを基準にしました。そういう稲が多かったです。今年は粒数が多く、重みのあるものが多いような気がしました。今回で評価をするのは3回目ですが、見た目での判断はだいぶ分かってきました」と述べました。

もう一人の評価者である斎藤主任に聞くと、「色が残っている稲もありましたが、植えた時期にもよるので、これから涼しくなればだんだん色が抜けていい稲になっていくと思います。評価してみて、いいものはいい、というのが実感です。悪いものはまったくなかったです。後は、収量が増えてくれればと思います」と語りました。

さて、こうして2日間にわたる圃場評価は無事終了したのですが、その数日後の9月30日、台風17号が日本列島を直撃。浜松地区では昼過ぎ頃から雨風が強くなりはじめ、夕方から夜にかけてピークに達しました。刈り取り直前の台風来襲でした。翌日、鈴木会長に電話すると、「大丈夫、立ってますよ」とのことで安堵しました。

去年は9月21日に台風15号が浜松に上陸し、場所によって大きな被害を被ったところもありました。その6日後に行われた圃場評価は台風の影響を心配しながらの巡回でしたが、稲は頭がしなっているだけで、ベタッとはしておらず、軸はしっかりしていました。今年も、静岡山田錦研究会の会員のつくった稲は丈夫だったようです。

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