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活動レポート

静岡山田錦研究会レポート

消費者の好みを予測して作付けを計画。食用米のもみまき始まる。

食用米のもみまき

乗松相談役

土を入れる

左が種もみ、右は土

もみをまいた苗箱を運ぶ

もみ殻を燻ったもの

もみ殻を燻ったものを混ぜた土

苗箱に布をかぶせる

苗を育てるビニールハウス

乗松浩二さん

今年も米づくりが始まる季節を迎えました。静岡山田錦研究会の会員で今年山田錦の作付けをするのは52名。今年も良質の山田錦の収穫が期待されます。
会員のみなさんは酒米の山田錦だけでなく、うるち米(食用米)もつくっています。むしろ、うるち米の作付け面積の方がかなり広いのです。そこで、春を迎えると山田錦の前に数種類の食用米の作業から順番にスタートしていき、その後、山田錦が続きます。もみまき、田植えの時期などは、早稲の食用米に比べ、ざっと1カ月ほど遅いのです。

雨が多く田んぼの粗起こしが延び延び

ところで、米づくりが始まる前、会員のみなさんは何をやっているのでしょう。以前、冬場の仕事として田んぼを起こす作業があると聞いていました。田起こし、あるいは粗起こし(あらおこし)、研究会の会員が自分で記入している栽培履歴記録表の項目には「耕起」という表現も使われています。粗起こしとはザクリ、ザクリと田んぼを起こすことで、冬田打ち(ふゆたうち)とも言うそうです。
この粗起こしを取材したく、年明けから何人かの会員の方にその時期が近づいたら教えてくださいとお願いをしていたのですが、今年の冬は例年になく雨が多かったため、どなたも粗起こしが延び延びになっています。

土質を知って田を起こすことが大切

そこで、話だけでもと思い、研究会の相談役乗松精二さんにお聞きしました。まず、粗起こしの目的は、「農家にとってメリットがあるような使い方のできる土にすることです」と言います。具体的には「肥料の量を減らして、なおかつ、稲がうまく育つ。20年、30年使い続けるために地力をなくさないような土にする」ことなのです。
粗起こしのポイントはタイミングだと言います。「その田の土の特性をよく引き出すには、その土質でいつ起こすのがいいのかを考えなくてはいけない」。例えば、「粘度が高い田は12月、もしくは1月上旬に起こさないと、田植え後、田んぼの力が出てこない。逆に、砂が多い田は12月、1月に起こすと、田植え後、土が疲れ果てている状態になってしまうので、3月、4月に起こすのがいい」ということなのです。もっと言えば、どのくらいの深さ、どれくらいの塊で起こすのかも求められると言います。それができないと「せっかくの田んぼをむだ使いしている」ことになるのです。
土質の分析はJA等でやってくれるそうで、分析することで、どういう起こし方をすればいいのか、どういう肥料を使えばいいのかが分かってきます。研究会の会員の状況は、「分析をして分かっている人、分析してないので分かっていない人、分かっていても間違った起こし方をしている人、間違った肥料を使っている人もいる。だから、いつ起こして、肥料は何を使ったかを栽培履歴記録表に必ず記入するように言っています」。研究会ではそれを基に会員に対して適切な指導をしているのです。
乗松相談役は「土の性質はものすごく重要で、それを見抜くことが大切です」と言います。田んぼを起こすことがこんなにも重要な意味を持っているとは知りませんでした。またまた、米づくりの奥の深さを教えられることになりました。

土の代用品を使ってコストダウン

さて、その乗松さんも今年の米づくりが始まり、4月6日に今年初、コシヒカリのもみまきを行いました。作業をするのは乗松さんのご家族とお手伝いの女性3名。ビニールハウスの中、播種機を使ったベルトコンベアによる流れ作業で、まず、苗箱をベルトの上に乗せて送り、土を盛る。その上に水をまく。そして、その上に種もみをまきます。種もみの量は食用の品種は1つの苗箱に130グラムから150グラム位が多いようですが、乗松さんは山田錦レベルの100グラム。薄まきです。丈夫な苗をつくるためです。そして、最後にその上に土をまきます。
実はこの土に工夫がありました。土の量を約半分減らし、もみ殻を燻(いぶ)ったものをその代用として使っていたのです。目的はコストダウン。土の購入代が約半分に削減できます。苗箱一つの重量も土だけだと約7キログラムありますが、この方法だと約4キログラムとだいぶ軽くなります。
このやり方は去年初めて導入しましたが、苗の発育に問題がなかったことから今年も継続してやっています。ただ、燻ったもみ殻はアルカリ度が6.5と高いため、もみ酢液を水といっしょにまいて土のpHを5弱に抑えるという工夫もなされています。 もみまきをして積み上げた苗箱を布でぐるっと包んだら作業は終了。今年初めてのもみまきは全部で516箱でした。

最初やさしく、後きびしく、苗づくり

一週間くらいして芽が1cmほど出たら、苗箱を広げ、暗幕でビニールハウスの屋根を覆い、直射日光が当たらないようにして「緑化」させます。やさしく苗を守ってあげると、だんだん色づき、緑色になっていきます。苗が6、7cmになったらビニールハウスの外に出し「硬化」させます。太陽の下にさらし、今度は厳しく育てるのです。こうすることで自然環境に慣らします。この日まかれた種は5月上旬、ちょうどゴールデンウィーク頃、田植えされる予定です。

お客さんの反応を見て作付け計画を立てる

乗松さんは数年前に息子の浩二さんに米づくりの計画をバトンタッチしています。浩二さんに聞くと、今年の作付け面積は去年とほぼ同じ。品種では山田錦の他、コシヒカリ、秋田小町、ミルキークィーン、ひのひかり、きぬひかりなど十数種類、もち米もやっています。
固定のお客さんだけでなく、一般のお客さん向けに近くにあるお店「白壁館」で販売をしています。しかし、ある品種が前の年にあまり売れなかったので、次の年作る量を減らしたら、今度はどんどん売れて米が足りなくなったということもあったそうで、浩二さんは、「一年で売れ筋が変わることがあり、消費者の動向を読むのはむづかしいです」と語ります。今年も去年のお客さんの反応を見ながら計画を立てました。そして、この日からそれに従って、年末まで続く仕事がスタートしたのです。

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